地震ハザード・地質・地震/津波をAPIで調べる
ある地点が今後どれくらいの確率で強い揺れに見舞われるのか、その足元はどんな地層なのか——こうした問いには、無料のAPIで答えられます。J-SHIS(防災科研)の地震ハザードと産総研の地質、そして気象庁の地震・津波情報は、いずれも登録不要で叩けます。多くは緯度経度を入口に取るため、住所は先に座標化しておくのがコツです。一方で「浸水深」「河川水位」は、同じ感覚では取れません(後述)。このガイドでは、実際に取れるものと、その数字の正しい読み方を整理します。
取れるリスク情報の種類
地震ハザードは J-SHIS のデータで、ある地点が今後一定期間に一定以上の揺れに見舞われる確率や、表層地盤の情報が取れます。緯度経度を指定して引く形式です。
地質は地点の地層名・地質区分が取れます。地盤の性質は、揺れやすさや液状化の目安を考えるうえで参考になります。地震・津波は、最近の地震一覧や津波予報・注意報が引数なしで取れます。
整理すると、**ハザード(想定・確率)**が地震ハザードと地質、**実況(いま起きていること)**が地震・津波です。この2種類は性格がまったく違うので、混ぜて扱わないことが重要です。前者は「平常時の立地評価」、後者は「監視・通知」に使います。
取得の具体例(パラメータの渡し方)
多くのツールは緯度経度が入口です。住所しかないときは、先にジオコーディング(別ガイド)で座標に変換してから渡します。
地震ハザードは jshis_hazard に lat / lon を渡すと、30年以内に震度6弱/6強以上となる確率や、表層地盤の情報が返ります。地点の揺れやすさを数値で把握できます。
地質は geology_at_point に lat / lon を渡すと、地質時代・岩石区分・岩相が日本語で返ります。シンボル記号だけでなく意味まで展開されて返るので、凡例を別途引く必要はありません(詳細は地質図のガイドを参照)。ただし精度は20万分の1が上限で、土地単位の判定には使えない点に注意してください。
地震・津波の最新状況は jma_earthquake / jma_tsunami を引数なしで叩けば一覧で取れます。
浸水深と河川水位が「同じようには取れない」理由
防災というと浸水ハザードマップや河川の水位を思い浮かべますが、この2つは緯度経度を投げれば返る、という種類のデータではありません。実際に調べた結果を正直に書きます。
**浸水深**(浸水ナビ/重ねるハザードマップ)は、緯度経度だけでは引けません。本家のサイトが使っているAPIは、地図上でクリックした代表点の属性(管理事務所コード・河川コード・地点ID)を必須パラメータとして要求します。これらは事前にハザードのベクタレイヤーから取得する必要があり、「lat/lon → 浸水深」という単純な呼び出しは成立しません。緯度経度だけで浸水深が返ると説明している情報を見かけたら、疑ってください。
**河川水位**(川の防災情報)については、より明確な理由があります。国土交通省の当該サイトは、**ツールによる機械的なデータ取得を明示的に禁止しています**。実際にアクセスすると `403 Forbidden / Access Restrictions: This site prohibits data acquisition using tools, etc.` が返ります。したがって、このサイトからのAPI的な取得は行うべきではありません。河川水位が必要な場合は、公式のサイトを人が閲覧するか、別途提供されている正規のデータ提供枠組みを確認してください。
浸水リスクを知りたい場合は、まず「重ねるハザードマップ」を人が見るのが確実です。機械的に扱いたい場合は、国土数値情報などで配布されている浸水想定区域のGISデータを自前で取り込む形になります。
確率という数字の読み方(最重要)
地震ハザードで返る「30年以内に震度6弱以上となる確率○%」は、扱いを間違えやすい数字です。これは「その地点が○年後に被災する」という予言ではなく、長期的な統計モデルに基づく確率です。確率が低い地点で大地震が起きないという意味ではありません。実際、確率が相対的に低いとされていた地域で大きな地震が発生した例があります。
また、この数値は基準となる想定やモデルの更新によって変わります。ある時点のスナップショットとして扱い、いつのデータかを併記してください。
地質についても同様で、20万分の1という縮尺の限界があるため、「この番地の地盤」を判断する材料にはなりません。広域の傾向を掴むための情報です。
リスク情報を第三者に提示する場合、**確率であること・想定であること・出典と時点**を必ず添えてください。断定的に「ここは安全です」「危険です」と表現するのは、防災情報の扱いとして適切ではありません。
使い分けと組み合わせ
**住所ごとのリスク診断**:住所をジオコーディングで座標化し、jshis_hazard(地震)+ geology_at_point(地質)を重ねると、その地点の揺れやすさの目安をまとめられます。複数拠点の住所リストを回せば、拠点ごとの比較台帳が作れます。
**地震・津波の監視**:jma_earthquake / jma_tsunami を定期取得すれば、発表を追う仕組みになります。こちらは実況なので、通知やダッシュボード向きです。
ハザード系(jshis_hazard / geology_at_point)は平常時のリスク評価、実況系(jma_earthquake / jma_tsunami)は監視、と役割を分けて使ってください。
出典
元システムエンジニア。Web系アプリ開発6年+ソリューション9年、IT実務およそ15年。個人開発者として、政府オープンデータや各府省のAPIを実際に叩いて検証し、「何が取れるか」「実装時にどこで詰まるか」「どう活用するか」を一次検証にもとづいて記録しています。
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