ミラサポplus APIで中小企業の支援事例を探す

執筆:NextLogic元SE・IT実務15年/政府オープンデータ・各府省APIを自ら検証) / 最終更新:2026-07-15

「IT導入補助金を使って、同じ業種の会社が実際に何をしてどうなったのか」——補助金の募集要項を読んでも、そこは分かりません。中小企業庁のミラサポplusは、支援策を活用して成果を出した中小企業の事例を集めたデータベースで、APIが公開されています。登録もキーも不要です。補助金の検索APIであるjGrantsとは役割がはっきり分かれており、両方を知っておくと使い分けができます。このガイドでは、取れるデータと実際に叩いて確認した仕様を整理します。

取れるのは「補助金」ではなく「事例という読み物」

最初に押さえるべきは、これが**成功事例のデータベース**であって補助金のデータベースではないことです。1件のレコードには、タイトル・要約・年度・所在地に加えて、`background`(背景)・`challenges`(課題)・`results`(成果)・`prospect`(今後の展望)といった**Markdown形式の長文**が入ります。写真(`images`)も付きます。読み物です。

そして重要なのは、**締切・補助上限額・応募要件といったフィールドが一切ない**ことです。当時使った制度への参照(`used_support_refs`)として補助金名が緩く紐づくだけです。「これを見て応募する」ためのデータではありません。

分類として `industry_categories`(業種)・`service_categories`・`purpose_categories`(課題)・`specific_measure_categories`(使った施策)・`themes`・`catalog`(出典の白書名)が付いており、「自社と同じ業種で、同じ課題を、この補助金で解決した事例」という探し方ができます。実測では「IT導入」で319件、「東京都」で180件がヒットしました。

jGrantsとの使い分け(実データで比較)

同じ「IT導入」というキーワードで両方を叩いて比べると、性格の違いがはっきりします。

**jGrants** が返すのは、いま募集中(または過去)の**補助金の公募情報**です。募集開始・終了日時、補助上限額(例: 1,000万円)、対象地域、対象従業員規模といった、**申請するかどうかの意思決定に直結するフィールド**が並びます。

**ミラサポplus** が返すのは、**過去にその制度を使って成果を出した企業のストーリー**です。金額も締切もありません。

つまり「**今すぐ申請できる補助金を探す**」なら jGrants、「**同業他社が何をどう解決したかを読んで着想を得る**」ならミラサポplus、という明確な分担です。実務では、ミラサポplusで事例を読んで方向性を決め、jGrantsで実際に応募できる制度を探す、という順序が自然でしょう。

4つのツールの辿り方

ベースは `https://mirasapo-plus.go.jp/jirei-api/` です。まずマスタを取り、次に検索し、最後に詳細を引く、という3段構えになります。

**マスタ取得**は `GET /categories/{industries|purposes|services|specific_measures}` と `GET /regions`。`industries` は日本標準産業分類ベースの大分類20件(A〜T)とサブカテゴリ、`purposes` は課題の11分類(1=販路開拓 〜 9=災害対応 〜 11=その他)、`regions` は8地方区分×都道府県が返ります。

面白いのが `specific_measures` で、**わずか6件**しかありません(ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金・中小機構ハンズオン支援・経営力向上計画・事業承継税制)。網羅的な制度一覧ではなく、**事例にタグ付けするために厳選されたマスタ**だということです。ここに無い制度で絞り込むことはできません。

**検索**は `GET /case_studies?keywords=...&prefecture.name=...&industry_category=...&purpose_category=...&limit=...&offset=...`、**詳細**は `GET /case_studies/{id}` です。

実装でハマる3点

1つ目。**都道府県はIDではなく名称で指定します**。`regions` を叩くと都道府県に `id`(東京都なら13)が付いてくるので、つい検索でもそれを渡したくなりますが、検索パラメータは `prefecture.name=東京都` という**名称の文字列**を要求します。実測で「東京都」を渡すと180件が正常に返りました。マスタが返すIDと検索が要求する値が違う、という食い違いです。

2つ目。**存在しないIDで詳細を引くと200が返ります**。実測で `id=999999999` を叩いたところ、HTTP 200 かつ `Content-Type: text/html` でSPAのトップページHTMLが返ってきました。404にはなりません。JSONを期待しているコードは、パースエラーで「Unexpected token '<'」といった意味不明な例外を吐きます。「404 Not Found」なら原因はすぐ分かりますが、これは分かりません。正規のID(実測では281)なら `application/json` が返るので、**Content-Type を検証する**のが確実な対処です。

3つ目。**検索が単純な文字列一致ではありません**。完全に無関係な文字列(`zzzxxxqqq...`)を投げると `{"items": [], "total": 0}` と綺麗に0件が返るのですが、一見無意味に見える文字列(「存在しないキーワードabcxyz999」)では**4件がヒット**しました。トークン単位の部分一致か、あいまい検索が効いているようです(正確な仕様は未確認)。「0件が返ったから検索は厳密だ」と結論づけると、想定外のヒットに驚くことになります。

なお文字コードはUTF-8で、日本語の文字化けはありませんでした。カテゴリ種別の指定は4種に固定されているので、綴りを間違えれば呼び出し前に弾かれます。

利用条件

APIキーは不要で、認証ヘッダなしですべてのエンドポイントが応答することを確認しました。

ただし、再配布の可否など利用規約の詳細は、APIのレスポンスにも開発者向けページにも見当たりませんでした。事例には企業名・写真といった第三者の情報が含まれるため、転載や商用利用を考えるなら、ミラサポplus側の規約を直接確認してから進めることをおすすめします。

出典

この記事を書いた人
NextLogicCiviNavi 主筆

元システムエンジニア。Web系アプリ開発6年+ソリューション9年、IT実務およそ15年。個人開発者として、政府オープンデータや各府省のAPIを実際に叩いて検証し、「何が取れるか」「実装時にどこで詰まるか」「どう活用するか」を一次検証にもとづいて記録しています。

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